格安の旅というのは、待ち時間が多いものである。だから、手持ち無沙汰にならないように現地 (カナダのエドモントン) の書店で一冊本を買った。なんとそのタイトルは、"Holy Cow" (David Duchovny, <Farrar, Straus and Giroux, Ney York, 2015>)。
タイトルのごとく、主人公の牝牛 Elsie は、牛が神聖視されているインドを目指してアメリカから飛行機に搭乗して、旅仲間の豚のJerry、七面鳥のTom ととんでも道中を繰り広げるのである。
内容は滑稽そのものであるが、しかし我々にとって大切な食料の問題について一考の示唆を与えてくれる本でもある。というのも、牝牛のエルジーがインドへ行こうと決心するのは、彼女が飼い主の家のテレビで大変にショッキングな映像 --- 牛が屠殺されて、夥しい出血をしながら皮を剥がれて、フックに吊るされる --- を目にし、また別の映像では牛がインドで神聖視されていることを知ったからである。
牝牛のエルジーも、ブタのジェリーも、七面鳥のトムも、自分たちが食べられない世界を目指して旅立つのであるが、そのために空港へと向かう途中で腹を減らしてゴミ箱へ顔を突っ込んだときに、残飯の山を目にしてエルジーは次のように嘆いている。
I mean, if I'm gonna be killed for food, at least eat me and poop me out and let me join the circle of nature. Don't kill me for no reason at all. And that's when I saw it -- a half-eaten hamburgers.
私が言いたいのは、もし私が殺されるのなら、少なくとも私を食べて排泄して、自然の循環に私を組み込んでくれ。まったく理由なしに私を殺さないでくれ。それは、私が見たからだ --- 食べかけのハンバーガー (が捨てられているの) を。
なお、本書の最後のほうでは、アラブとイスラエルの政治的・歴史的に微妙な問題にも触れているが、小生はそのことへのコメントは控える。
最近のコメント